はじめに
クラウドエンジニアにとって、ネットワークの基礎はシステム設計やトラブルシューティングに欠かせないスキルです。
本記事では、TCP接続の仕組みや役割を解説し、クラウド環境で活用する場面を考えていきます。
TCP接続とは
TCPは、データの正確な送受信を保証するために重要なプロトコルです。特にクラウドサービスでは、アプリケーション間の安定した通信を確立するために欠かせません。
以下のような場面で利用されます。
- データ転送の正確性:データパケットが正しい順序で送られ、欠損がないことを保証
- セッションの管理:通信の開始から終了までを管理
- トラブルシューティング:通信の信頼性を担保するための再送制御
要するにTCP接続は通信の正確性と安定性を維持するために行う接続方式です。
三者間ハンドシェイクの流れ
TCP接続で有名なものが三者間ハンドシェイクです。
以下の手順で通信が開始されます。
- SYN接続要求
- SYN-ACK接続承認
- ACK接続確立
この手順で双方向の通信準備ができます。例えば、クラウドサービスではロードバランサーやWebサーバー間の通信でこの仕組みが使用されています。
TCPパケットの流れ
例えば、ファイルを送信した場合の流れを説明していきます。
- 送信側: 大きなファイルを複数のセグメントに分割し、それぞれにシーケンス番号を付けて送信します。
- 受信側: セグメントを受信し、シーケンス番号に基づいて順番に並べ替えます。
- 確認応答: 受信側は正しく受け取ったセグメントに対してACKを返します。欠損があれば再送要求が発生します。
- データの再構成: すべてのセグメントが正しく受信されると、データを再構成し、元のファイルとして完成します。
TCPヘッダーとは
TCPヘッダーは、TCP通信の際にデータの先頭部分に付加される情報のことで、データの送受信を正確かつ信頼性高く行うために重要な役割を果たします。
ヘッダーには、送信元や宛先のポート番号、データの順序情報、エラーチェック用のフィールドなど、通信の制御に必要な情報が格納されています。
項目名 | 役割 |
---|---|
送信元ポート番号 | データを送信した側のポート番号 |
宛先ポート番号 | データを受信する側のポート番号 |
シーケンス番号 | 送信するデータの順序を管理するための番号 |
確認応答番号 | 受信側が次に受け取るべきデータの番号を示す |
ヘッダー長 | ヘッダー部分のサイズ |
フラグ | 通信状態を示す制御フラグ(SYN, ACK, FINなど) |
ウィンドウサイズ | 受信側が受け入れ可能なデータサイズを通知 |
チェックサム | データのエラーチェックに使用 |
緊急ポインタ | 緊急データが含まれていることを示す |
UDP接続との違い
TCPと比較される対象としてUDPが挙げられます。
用途は以下のように全く異なり、TCPでは信頼性を重視する通信に、UDPは速度を重視する通信に適しています。
特徴 | TCP | UDP |
---|---|---|
信頼性 | 高い(データ確認や再送制御あり) | 低い(確認なし) |
速度 | 遅い(確認処理があるため) | 高い(確認処理がないため) |
用途 | Web通信、ファイル転送、メール等 | 動画ストリーミング、ゲーム |
メリット・デメリット
メリットとしては以下の項目が挙げられます。
- 信頼性の高さ
- データの順序保証
- 確認応答によるエラー修正
TCP接続は三者間ハンドシェイクによって信頼性の高い接続を確立できます。接続が確実に行われるので、データの破損がなくなります。
また、接続に失敗した場合、再度接続を実行してエラーの修正を行います。
デメリットとしては以下の項目が挙げられます。
- 通信のオーバーヘッドが大きい
- レイテンシが発生しやすい
通信を確実にするために接続を複数回行っています。そのため、確実性が出てきますが逆にいうと通信が無駄に行われてるとも言えます。ネットワーク帯域や速度に影響する可能性が出てきます。
ほとんど速度に影響はないため、特に気にする必要はありません。
AWS環境での具体例
AWSで使用されているTCPは次のようなリソースで使用されます。
- ロードバランサー
- Amazon EC2の接続
- Amazon RDS(データベース接続)
具体例としてロードバランサーは以下の流れで通信が行われます。
- クライアントからロードバランサーにTCP接続を確立。
- ロードバランサーが内部ターゲット(EC2など)にリクエストを転送。
- ターゲットとロードバランサー間でもTCP接続を使用。
これにより、負荷分散と信頼性の高い通信が行われています。
まとめ
TCP接続の仕組みを理解することで、より安定したクラウドアーキテクチャの設計やトラブルシューティングが可能になります。
クラウドエンジニアとしてのスキルをさらに深めるために、他のプロトコルとの使い分けや応用例にも挑戦してみてください。
次に、UDPやIP通信をAWS環境でどのように設定・活用するかを学びましょう。